【ガールズ競輪】関電のデスクから“新人王”の頂へ──仲澤春香、再起のストーリーと「賞金女王」への現実的ロードマップ

その他

ガールズケイリンに、空気を変える新人が現れました。
仲澤春香(なかざわ・はるか)選手。

ルーキーの頂点を決める一発勝負「ルーキーシリーズ2024プラス」を制し、“新人王”の名にふさわしいインパクトを残した存在です。

ただ、彼女の物語が胸を打つのは、強いからだけではありません。
かつて関西電力で働きながら実業団のボート競技に打ち込み、職場の理解と支えのもとで競技に向き合っていた──その「両立の現場」と「感謝の気持ち」が、いまの“強さの芯”になっています。

そして今、彼女は“ただの強い新人”では終わりません。
賞金女王は狙えるのか? 歴代女王とタイプが似ているのは誰か? 史上最強になり得るのか?

整理したいとおもいます。


1. 「地元・福井で強くなれる」関西電力を選んだ理由──“お世話になる”の重み

仲澤選手は高校卒業後、進路として大学か実業団かを選ぶ局面で、「地元・福井を拠点にしている関西電力にお世話になることを決めました」と語っています。
この一言には、

競技環境だけでなく、生活基盤や家族の事情まで含めて「現実と向き合った決断」

がにじみます。

関西電力ボート部自体も、福井の地に根差し、社員が仕事と競技を両立しながら活動する歴史あるチームとして紹介されています。
「企業スポーツ」は、会社が選手を“抱える”のではなく、社員としての仕事と、アスリートとしての挑戦を並走させる文化で成り立つもの。

その象徴的な舞台が、関西電力ボート部でした。


2. 朝はボート部の練習、日中は“労務”の仕事──両立のリアル

関西電力入社後、仲澤選手は朝にボート部の練習をしてから出勤し、労務などの事務作業を担当していたと報じられています。
これは美談にしすぎてはいけないほど、タフです

  • 体力を削る朝練(=競技の土台)
  • 会社員として責任を果たす日中業務(=社会人としての土台)
  • 大会・合宿・結果というプレッシャー(=アスリートとしての土台)

しかも、会社としては大会前に勤務が免除されるなど、競技生活を後押しする配慮もあったとされています。
「両立」は本人の根性だけでは成立しません。職場の理解、業務設計、周囲のフォローがあって初めて成立します。ここに、関西電力という組織の“支える力”が確かに存在していました。


3. 苦しい時期も、会社の中で戦っていた──休職、そして決断

華やかな“新人王”の裏にあるのは、順風満帆とは程遠い時間です。
高校卒業前から抱えていたイップスが悪化し、思うようにパフォーマンスが出ず悩み、社会人2年目には任される仕事も増える中で心身のバランスを崩して休職に至った、と語られています。

そして、最終的に入社から2年弱で退社という決断に至りました。
この局面で大切なのは、“根性が足りなかった”という雑な物語にしないこと。

彼女自身が

「心が一番苦しかった」

と振り返るように、競技と仕事の両立は、ときに心の限界を試します。

だからこそ、ここで入れておきたい「感謝」の視点があります。
仲澤選手は別インタビューで、実業団選手は「会社の負担の下に競技ができている」と語っています。
これは、企業スポーツに関わるすべての人(選手・指導者・職場の同僚・管理部門)に対する、静かな敬意の表現です。

関西電力という組織の中で、彼女が競技に向き合えた時間があった。
それは、結果だけでは測れない“価値ある土台”になって、いま彼女のペダルに乗っています。


4. 競輪へ転身──半年で養成所合格。「ボートで培った我慢」が武器になった

退社後、仲澤選手はガールズケイリンに出会い、驚くべきスピードで競輪の道へ踏み込みます。
ワットバイク中心のトレーニングなどを重ね、短期間で養成所合格に至った経緯が語られています。

彼女が「ボートが活きた点」として挙げるのが、「我慢する力」、そして長い距離をもがけること。
この“ロングで踏み続けられる才能”は、ガールズケイリンでも最重要級の武器です。

一方で課題もはっきりしていて、本人は

「瞬間的に高出力を出すところが難しい」

とも語っています。
ここが後に、「史上最強」へ向かううえで最大の伸びしろになります。


5. 新人王の戴冠──ルーキー頂上決戦を制し、JKA表彰でも“優秀新人選手賞”

仲澤選手が“新人王”級の存在感を示したのが、防府で行われた「ルーキーシリーズプラス」
このレースは、デビュー年の新人たちによる一発勝負で、選抜された選手が集う「頂上決戦」の性格を持ちます。
そして仲澤選手は、その舞台で優勝を掴み取りました。

さらに、JKAの「2025年表彰選手」発表では、ガールズの優秀新人選手賞に選出されました。

“レースで証明”し、さらに“表彰で刻まれた”。
新人王は、肩書ではなく「実力で奪った称号」になりました。


6. どの女王タイプに近い?──「踏み続ける」×「折れない」新種のエース像

歴代の“女王”たちには、それぞれ勝ち方の美学があります。

  • 爆発的なスプリント力でねじ伏せるタイプ
  • 位置取りと展開読みで勝つタイプ
  • ロングスパートで相手を削り切るタイプ
  • 何でもできるオールラウンダータイプ

仲澤選手はどこにいるのか。

似ているのは「自力で勝ち切る」系譜

インタビューで仲澤選手は、「力で勝たないといけない」「流れに乗って何でもできるようにならないと」と語っています。
これは、逃げても捲っても勝てる“王道の自力型”を目指す宣言です。

そして、強みの中心は“メンタルの粘り”

別インタビューでは、自分の強みを問われて「最後まで諦めないで踏むところ」と自己分析しています。
関電で「朝練→出社→業務」を積み重ねていた日々は、まさにこの“最後までやり切る体質”を鍛える環境だったはずです。


7. 賞金女王は狙えるのか?──結論:狙える。ただし“勝ち方の設計”が鍵

将来、賞金女王を狙えるのか。
賞金女王(年間獲得賞金トップ)を狙う道は、仲澤選手にとって現実味があります。

ただし、他の選手より条件が少し特殊です。
彼女はナショナルチームでの活動も行っており、レース数を積み上げにくい可能性がある。だからこそ、本人はこう語っています。

自分の場合、グランプリに出るためには賞金の積み重ねでは厳しい。GIを優勝するしかありません

この言葉は、裏返すとこういうことです。

  • 仲澤春香の“賞金女王ルート”は、積み上げ型よりも「タイトル奪取型」
  • GIを獲れば、賞金も格も一気に跳ね上がり、グランプリ出場=賞金最大化が現実になる

つまり彼女の未来は、「勝ち星の多さ」ではなく「大一番での勝ち方」にかかっています。


8. 史上最強になり得るか?──鍵は3つ。「過去の経験」が全部つながる

「史上最強」は煽りに聞こえるかもしれません。
でも、可能性を語るだけの材料が揃っているのも事実です。

鍵①:瞬発力の上積み(=弱点が伸びしろ)

本人が「瞬間的に高出力を出すのが難しい」と言う通り、ここは伸びしろです。
もし短距離の爆発力が上がれば、ロングもスプリントもできる“完全体”が見えてきます。

鍵②:「何でもできる」へ進化するレースIQ

彼女は理想像として「何でもできるタイプ」を目指していると語っています。
関電での業務は、状況整理・優先順位・関係者調整が求められる仕事。            競輪のレースメイクにも通じる“思考の筋力”が鍛えられていた可能性は十分あります。

鍵③:折れない心──“会社の支え”を知っている強さ

仲澤選手は「実業団選手は会社の負担の下に競技ができている」と語りました。
支えられた経験を知っている選手は、強い。
なぜなら、勝負の終盤で踏めるのは、脚だけじゃない。背中に“支えてくれた人たち”が乗っているからです。


9. 追い風のエピソード──連勝ストップすら「伸びしろ」に変える

国内23連勝中で臨んだ「ガールズフレッシュクイーン」で2着に敗れ、連勝が止まったと報じられました。
しかし、本人コメントは“言い訳ゼロ”。

  • 「仕掛けが遅れてしまった」
  • 「海外遠征の疲れ? それは言い訳にならない」
  • 「もっと頑張らないと」

倒れたことより、倒れた後の立ち上がり方が、この選手の強みです。


実業団での経験をもって、次代の女王を目指す

仲澤春香選手の物語は、ただの転職成功談ではありません。
実業団の競技者として挑戦し、支えられ、悩み、いったん競技人生が止まり、それでもスポーツの道に戻ってきた。

その過程で彼女は、企業スポーツの本質を言葉にしています。
「実業団選手は会社の負担の下に競技ができている」。
この一言に、会社・職場・仲間への感謝と、競技者としての責任感が詰まっています。

そして今、彼女は“新人王”を超えて、GI制覇、ガールズグランプリ、さらには賞金女王へと視線を上げている。
本人も「GI優勝が目標」と明言しています。

関電の職場で培った「最後までやり切る力」が、競輪のバンクで“最後まで踏み切る力”に変わった。
この物語の続きは、きっとまだ一番おもしろいところに入っていきます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました